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付録A ジストニアとは?――ジストニアと診断された患者さんのために――

制作:米国ジストニア調査研究財団

翻訳・日本ジストニア協会(監修:京都大学神経内科電気生理研究室)

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はじめに

ジストニアは病気と病気のグループの名前の両方を意味する言葉です.その特徴は、身体の1つまたはいくつかの部分の筋肉が不随意に収縮し続ける結果, 身体のいろいろな部分でのねじれやゆがみが生じることです.

ジストニアの原因は、脳の一部の基底核と呼ばれている部分の機能障害と考えられています.このジストニアでは,知的な機能に障害はありません.ジストニアは、震えを伴うことがあります.時には,よくある老人の震えのような,粗大な震えや不規則なけいれんが見られます.

ジストニアには数多くの分類法があります.侵される身体の部位による分類のほか,原因が分かっているもの(二次性)や,分かっていないもの(突発性)などです.現在,一番良く用いられる分類は,下記の通りです.

1)突発性捻転ジストニア(idiopathic torsion dystonia : ITD)
このタイプは典型的には身体の一部分から発症することが多く,通常,太ももや下肢といった部位が傷害され,歩行などの運動の際,足首が下にねじれて,そのために,足の外側の縁で歩いてしまいます.この突発性捻転ジストニアは通常,幼年時代に始まります.そして,身体の別の部分にもしばしば広がります.背中,首,腕にも広がり,遺伝形式は染色体性優性のことが多く,また,時折,遺伝素因なしでも起こります.(「ジストニアは遺伝するのか」をご覧ください)
2)遺伝性ジストニア(ドーパ反応性ジストニア)とX染色体性遺伝のパーキンソン症候群
ドーパ反応性ジストニアは,日本の瀬川先生によって最初に記述されてから,瀬川病と呼ばれています.このような患者さんは,現在,アメリカ,カナダ,イギリス,その他のヨーロッパ諸国で見られます.その典型的なスタートは,幼年時代または青年時代です.そして,たびたび軽い硬直とパーキンソン病を思わせるぎこちなさを伴います.ドーパによる治療で完全にその症状をコントロールすることが出来ます.この効力は無限に持続します.X染色体性遺伝のパーキンソン症候群は,フィリピンの男性の中で発見されたジストニアの一型です.それは,パーキンソン病の特徴を持っており,進行することがあり,重大な障害を来すことがあります.
3)二次性ジストニア
このタイプのジストニアは,脳の小さなダメージや損傷による二次的なジストニアといえます.原因としては,酸欠や出産期前後の脳損傷(脳性小児マヒ)が多く,特に幼少・幼年時代,あるいは小さな発作によるもの,脳炎などの脳の病気の後遺症としても起こります.また,肝臓と脳の侵されるウィルソン病などの遺伝疾患により起こることもあります.
4)局所性ジストニア
局所性ジストニアには,書痙,眼瞼痙攣,斜頸,口部・顔面・顎部ジストニア(口を歪ませるジストニア),喉頭のジストニアなどがあります.
書痙は,手や腕の筋肉が,書くという行為の間,異常に収縮する局所性のジストニアの1つです.腕が大変きつく引っ張られて(歪み),動かすことができません.ペンや鉛筆が手から離れるやいなや,手はリラックスします.また,よく似た痙攣が音楽家に起こります.バイオリンで弓を扱うことやフルートを演奏するとき,動いてはいけない指が動いてしまう病気で「音楽家の痙攣」と呼ばれます.
眼瞼痙攣は,まぶたが数分間から数時間もきつく閉じてしまいます.これは,まぶしい光に当たることや,ストレスなどにより悪化します.この病気も局所性ジストニアの1つです.
斜頸spasmodic torticollis)または頸部ジストニアcervical dystonia)は,首の筋肉の異常な収縮により一方向に頭が回ってしまうか,前方に引っ張られたり,後方に引っ張られたりする局所性のジストニアです.ときどき,この異常な収縮は粗大になり,頭を急にぐいっと引く動作を起こします.しかし,その症状は顎や顔の一部分を触ることで部分的に和らぎます.
口部・顔面・顎部ジストニアorofacial-buccal dystonia)は,時にはメイジュ(Meige)症候群とも呼ばれます.顔の下部の筋肉が不規則に引っ張られたり,収縮したりします.時には顎の筋肉が引っ張られて不随意に口を開けたり閉じたりします.時には首の表面の筋肉が収縮します.眼瞼痙攣も伴うことがあります.
喉頭のジストニアまたは痙攣性発声障害は,喉頭や声帯の筋肉に影響する局所性のジストニアです.
声帯内転筋のジストニアは,特に人間がしゃべろうとする時に声帯がきつく引っ張られます.声が力んで,しゃがれ,量も小声になります.ときどき呼吸が困難になる人がいます.声帯外転筋ジストニアでは,声帯が離れて引っ張られ,声が低く,息が漏れるような声になります.ときどき,全くしゃべれなくなる人がいます.
片面顔面痙攣」は,厳密に言えばジストニアではありません.この病気では,顔の半分の筋肉が不規則に収縮するもので,顔面神経の炎症や損傷の後で起こることがあります.

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ジストニアはなぜ起こるのか

ジストニアにおける筋肉の引っ張りやねじれは,中枢神経の機能の異常によるものと考えられています.ジストニアで障害をされている脳の部分は基底核と呼ばれています.基底核は脳の中心にあり,いろいろな運動をコントロールしています.

ジストニアが他の病気の後遺症として二次的に起こる時,たびたび病変は大脳基底核の中(特に淡蒼球putamen)に,MRIやCTで病変が見つかったり,顕微鏡的変化があることがあります.

しかし,大半のジストニア(突発性捻転ジストニア)の場合,脳の顕微鏡的異常を見ることはありません.二次的なジストニアにおいて,病変が上に述べた場所にあるため,やはりこの病型でも,脳の同じ部分が侵されるものと考えられます.これら大半のジストニアの病型でも解剖学的な変化が見られないということから,病気の性質が,化学的なものであると考えることもできます.いまだに,その化学的な異常の本態は分かっていません.

もし,ジストニアのほとんどの場合の主たる異常が化学的なものだとしたら,あるいは,治療の可能性を示唆するものかも知れません.それに対して,病変が解剖学上か構造上の変化であるとしたら,治療としては少ししかできることはありません.その場合,神経細胞を修繕したりする方法はいまだに分かっていません.将来,外科的なアプローチができるかも知れません.

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ジストニアは進行するものか

ジストニアの進行を予言することは困難です.私たちは,もしもジストニアが家族の別のメンバーにも見られたり,症状が幼年時代に始まったとしたら,年を追うごとに悪化すると言うことができます.けれども,これらのケースの中でさえ,進行が止まったり,事実上,部分的な症状であったり,完全に回復したりすることはよく知られています.これらの例があることは,確かに私たちに希望を持たせてくれます.

もし,その症状が幼年時代に始まり,脳性小児マヒや,大脳の病変による二次的なものの場合,そのジストニアは長年,同じ症状である傾向にあります.脳性マヒによる二次的なジストニアのうち,少数の例は大人になってから進行することがあります.しかし,これらのケースはとても稀です.

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ジストニアは遺伝するか

ある種のジストニアが遺伝するとの見方は,明らかになっています.ここ10年の間に,この分野におけるジストニアの知識は飛躍的に進歩しました.現在,ある種のジストニアは遺伝するといえます.専門的には一定の浸透度で常染色体性優性の遺伝形式と呼ばれています.

優性という意味は,一組の夫婦の子供のそれぞれが,異常のある遺伝子と正常の遺伝子を半々の確率でもっています.ある人が遺伝子を持っている時,その人は病気を発症するか,少しも徴候が見られないこともあります.たとえ遺伝子が異常でも,発症する確率は30〜80%です.

遺伝するといっても,病気の重症度は家族内で著しく違うことがあります.たとえば,軽症のジストニアに侵された母親の子供が,重い全身性のジストニアを持つことがあります.ところが,一方,別にもっと軽い局所性の進行しないジストニアになることもあります .また,同じ家族の子供で遺伝子を事実上持っていても,全く症状がないことがあります.しかし,そのような軽症の人,無症状の人でも,その子供に遺伝子は受け継がれることはあります.

ユダヤ人タイプの捻転ジストニアと,ユダヤ人以外の家族においてXandra Breakfield医師,Stanley Fahn医師らは,9番目の染色体の一部に遺伝子の異常を見出しました.しかし,家族間でその遺伝子自体がまだ同一であるとは分かっていません.これについては,近々,より詳しいことが分かると予想されています.

いったん遺伝子が見つかると,次のステップは,その遺伝子の役割を知ることです.おそらく,それは細胞の蛋白質の製造に影響を及ぼすものでしょう.それなら,治療としてその欠陥の蛋白質にとって代わる物質を作ることができるかも知れません.

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ジストニアの診断方法

ジストニアは比較的まれな病気で,異常な動作や姿勢があり,早い段階においては,ストレスや情緒により影響されることもあります.多くの医師は症例を見たことがなく,医学校ですら十分に教育されないことが多く,十分な知識があり,正しい診断ができる経験のある医師を見つけることは,たびたび困難です.

もし,このパンフレットの読者が,ジストニアに罹っているかもしれないと疑いを持ったとしたら,最良の方法は,運動障害を専門とする神経内科医に診察してもらうことです.ほとんどの大学と大きな都市で,そのような医師が見つかります.見つからなければ,ジストニア協会に問い合わせたり,意見を聞いたりすることができます.

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もし,ジストニアと診断されたら

もし,ジストニアと診断がついたなら,医師が一番最初にすることは,注意深く家系を調査し,局所性または全身性ジストニアを持った人を捜します.ほんのわずかな「首の曲がった人」(斜頸)にさえ注目すべきです.それに,あらゆる種類の手や足の震えも注目すべきです.この情報は決定的な意味のある遺伝の証明となります.

第2番目に,どんな療法が適切かを考えてみるべきです.ジストニアについての豊富な経験をもった神経内科医が,あなたの主な指導者となるべきです.たくさんの薬が利用できますが,たった2,3の薬しか一個人に対して効きません.どんなにたった1つの薬でも,かなり有効か,わずかに有効か,全く効かないのか,を確かめてみなくてはいけません.1つの薬を試した後,効かなければ別の薬を試すことが必要です.

主に用いられる薬には,次のようなものがあります.

アーテン(トリヘキシフェニジル)
コゲンチン(ベントロピン)・・・・・・・・・・・・・・日本では発売されていない.ほとんどアーテンと同じ.
バリウム(ジアゼパム)・・・・・・・・・・・・・・・・セルシンと同じ.
クロナピン(クロナゼパム)・・・・・・・・・・・・・日本のリボトリール(ランドセン)
リオレサール(バクロフェン)
テグレトール(カルバマゼピン)
シネメットまたはマドパー(レボドーパ)・・・ネオドパストン,エルドーパ,ドーパ系の薬
パーロデル(ブロモクリプチン)・・・・・・・・・・パーキンソン病の薬
シンメトレル(アマンタジン)

ニトーマン(テトラベネジン)はたびたび有効です.しかし,アメリカでは利用できません.

ソラジン(クロールプロマジン) とハルドン(ハロペリドール),そして,フェノチアジンやブチロフェノンのグループは治療に役立ちます.しかし,遅発性ジスキネシアと呼ばれる症状を引き起こすという一面があり,非常に慎重に使わなければなりません.

眼瞼痙攣,メイジュ症候群,斜頸,痙攣性発声障害といった局所性ジストニアには,ボツリヌストキシンの注射がとても有効な治療法となっています.そのジストニアが筋肉の限られた範囲だけ関係しているとき有効です.その治療法は3〜4か月ごとに繰り返す必要はありますが,その間たびたびよく効きます.その治療は,それを治療するのに相当な訓練を積んだ医師によってのみ行われることになっています.喉頭のジストニアはどの治療より一番難しく,選び抜かれた資格のある医師によって特別な注意を払って行わなければなりません.

外科的処置の幾種類かは,ジストニアに有効といって差し支えありません.これは,万が一,薬物療法では全く効き目がなく,ジストニアの激烈な苦しさが増すときのみ,十分に熟慮して行われます.モントリオールのクロード・バートランド医師とそのグループは斜頸のとても有効な手術を開発し,訓練されています.その手術では,首の中の脊髄から出ているたくさんの神経根や,異常な運動を示す筋を支配する神経の枝を切ります.

別の手術として知られているのは,定位視床切除術です.この手術では頭の奥深くにある,ある通路(視床)を遮り,半身のジストニアによく効きます.この特別な手術は,広範囲の経験のある神経科医によって行われなければなりません.手術直後は効いている場合がありますが,すぐにまた,元に戻ることがあります.

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もし,あなたがジストニアになったらなにができるでしょうか

デビッド・マースデン医師は,次のようなアドバイスを患者さんに行っています.

「あなたのこの病気に対する心構えが,病気の症状を決定づける一番重大な要素の1つになります.ジストニアでは死にません.しかし,あなたが倒れたら,あなたの生活がだめになってしまいます.あなたの病気の本質を学ぶとき,ショックを受け,怒り,絶望し,意気消沈し,そして,受け入れて行くという場面を通って行くことは,とても自然なことです.この展開に時間はかかると言ってよいでしょう.しかし.あなたは,あなたの病気の現実を,できるだけその最後の受け入れ場面まで肯定的に行動しなければいけません.そして,この病気にいかにして打ち勝つかを見つけていくべきです.これらの問題について,あなたのご家族や医師と話し合ってください.

ジストニアに罹っている他の方からも,多くのことを学ぶための手助けをしてくれる組織があります.財団では,地方支部と協会のリストを用意しています.あなたは,たくさんの闘病を経験してきた人で,他の患者の手助けを厭わない人を見つけることができるでしょう.

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ジストニアの患者さん,および支援者へのお願い

いま,アメリカでは大きな研究プロジェクトが続けられています.そのほとんどがジストニア医療調査財団の寄付によって運営されています.いくつかの調査は現在,国民健康協会の寄付によって設立されていますが,すべての源となる調査研究費はもっと必要です.ここ10年間における主な調査研究費は,この病気を研究している研究者に支払われています.次の2,3年の間にも,このような募金や治療のための研究がなされる予定です.

(このジストニアに関するパンフレットは,諸般から最新版まで,アメリカにおけるジストニア調査研究財団の科学責任者チャールズ・エイチ・マーカム医師によって,1985〜1994に書かれました.)

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ジストニアの森

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